ドイツ文学の中でも特に有名なヘルマン・ヘッセ作「車輪の下」を1分で読める要約をしました。名場面や薬品が作られた背景なども詳しくご紹介します!
「車輪の下」という書題を聞いたことがある人はわりと多いのではないでしょうか。
ドイツ文学としては日本でかなり有名な部類に入ると思います。特に、読書感想文の定番課題というイメージを持っているのではないでしょうか?
今日はそんな「車輪の下」という作品を1分で理解できるようにあらすじをまとめました。
「車輪の下」が書かれた背景
『車輪の下』Unterm Rad(1906)は、著者であるヘッセが29歳の時に世に出た作品です。
1891年に牧師になるため入学した「マウルブロン修道院神学校」での苦い経験を色濃く反映していると言われています。
もともと頭がよく聡明だったヘッセは、この学校を進めば国家の費用で牧師になれるはずでしたが、半年もしないうちに神学校を脱走し、退学となります。
ヘッセは4歳から詩を作っていたりと、かねてから詩人になりたかった為、その強い願望と神学校の確約された将来との板挟みで苦しんだことから脱走→退学という残念な結果に・・・。
そんなヘッセの苦しい葛藤が車輪の下の主人公ハンスに投影されています。
車輪の下の主な登場人物
ハンス・ギーベンラート
主人公。頭脳聡明かつ天才肌。
多くの人々から将来を期待される優等生。昔は釣りやウサギ小屋作りが好きな少年で、自然も好き。
ヨゼフ・ギーベンラート
ハンスの父親。厳しく堅い性格。子供に期待を寄せている一人。本人はあまり学がない。
町の牧師
ハンスに多大なる期待を寄せている人の一人。
フライク
靴屋の親方で敬虔主義者。子供に関して、遊びなどを通して様々な経験を培うべきだと考えている。勉強ばかりしていて身体が細いハンスを心配する。
エンマ
ゲッスラーという検査官の娘。比較的軽薄な性格。
アウグスト
ハンスの旧友で製鉄工。
ヘルマン・ハイルナー
ハンスの学校の友人。
天才的で野性的な詩人。ハンスの詩人に対する憧れに関連してくる存在。ある日、ルチウスと喧嘩をしたことで校長から監禁の罪を受け、他の人とも疎遠になる。
エミール・ルチウス
ハンスと同じく勉強を主軸に頑張る勤勉な生徒。本文ではずる賢い性格と述べられるが、むしろ効率的な性格。音楽の才能がない。
1分でわかる車輪の下のあらすじ
ハンスは天才的頭脳の持ち主。有名神学校に2位の成績で合格する。
勉強を主軸として生きていた彼であったが、神学校での生活を過ごしていくうちに、その生き方を疑問視するようになる。
しかし、周囲の期待はハンスの本来の我意ではない神学校卒の優秀者であった。ハンスは自らの欲望と周囲の自然との間で板挟みになり、心身ともに衰弱していく。
最終的に勉強に手をつけなくなり、神学校を退学することとなる。ハンスは、工業関連の従業者として再起しようとしますが、絶望感や同級生に対する劣等感などが積み重なり、さらなる自暴自棄に突入します。
ハンスは酒に酔った勢いでそのまま川に落ち、溺死したかのような表現とともに物語は幕を閉じます。
あらすじの解説
内容を見てもわかるとおり、車輪の下はヘッセの非常にパーソナルな体験を詳細に下敷きにして書かれています。
神学校退学時は14歳であり、15年後の29歳で作品を発表しており、比較的初期の作品ともいえます。
当時の学校制度や、それと結び付く過酷な圧制への激しい告発的内容も垣間見られ、現代に応用できる教育問題としての側面も含有しています。
車輪の下で押さえたい名場面はココ!
車輪の下は比較的短い小説でもあり、ここだ!という名場面があるというわけではありません。強いて言えば全てが名場面で、物語の退廃に向けての流れ全体が偶然かつ必然的で美しいといえます。
退廃主義としての流れの終着点であるラストシーンは、一つの頂点ともいえるシーンです。
当時の風潮であるデカダンス的退廃小説の傾向をしっかりと踏襲しています。
「魔の山」などは社会を中心としてデカダンスが進行し、登場人物もその潮渦に巻き込まれる形ですが、車輪の下は一個人の埋没という形です。
また、これも比較的によくみられる傾向なのですが、最後はどうも主人公は死んだらしいのだが、真相はよくわからないという文面が展開されます。
同じくドイツ文学である魔の山などでも使われており、最後を比較的ぼかした終わりにしています。
最後はピシッと書いてくれていないとすっきりしないという人もいるかもしれませんが、生死の結果に関するヒントを著者が文章に隠していることも多いですし、物語の今後を考えたりしても面白いかもしれません。
さらに、もう1シーンあげておくならば、ハイルナーとハンスのキスシーンも名場面です。
ハイルナーはその性格ゆえに他の人と衝突することも少なくありません。
ハンスは自由な性格のハイルナーと親しくしたこともあり、他の人と喧嘩をして部屋を飛び出してしまったハイルナーのもとに駆け寄ります。
そこでキスシーンがあるのですが、むろんこれは恋慕としてのキスではなく、幼少な彼らの拙い友情表現の一つです。
其の脆さゆえに切なく美しいシーンです。
車輪の下というタイトルの由縁は?
車輪の下というタイトルは、周囲の期待を重い車輪に例え、それに押しつぶされていくハンスの人生をイメージしたものと思われます。
どんなに抵抗しようともどうにもできない重圧にじわじわと押しつぶされていくハンス。
まさに「車輪の下」と言うタイトルがぴったりですね。
まとめ
先述で、読書感想文の定番だと述べましたが、個人的には、中学・高校生よりももっと年上の人向けの文学のような気がします。
この作品を共感しやすい人は、人生で本物の挫折や絶望・社会の構図を経験した人が当てはまるので、そのような人生経験に富んだ方なら共感できるポイントが多いのではないでしょうか?
とはいえ、世界の名文学の中でも、車輪の下は比較的分かりやすい作品。
モモなどの作品で文学に興味を持った人には是非オススメです。しかし、ヘルマンヘッセの他の作品は非常に難解で難しいです。テーマが深いという言い方もできます。
割と人生を過ごす上で経験しやすい自伝的な内容が車輪の下の読みやすさと言えます。決して明るい話ではないですが、ヘッセの抱えた深いテーマを感じ取ることができる貴重な作品です。
人生の大きな選択で悩んでいる方はぜひ一度目を通してみてはいかがでしょうか?
おらひ
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