誰もが知るムーミンは明るくてユーモラスなイメージですが、原作はただ明るいだけではありません。そんな独特なムーミンの世界観を童話全集を通してご紹介します。
北欧・フィンランドの作家トーベヤンソンが生み出した「ムーミン」。
日本でも多くのファンをもつムーミンですが、とうとう2019年3月16日(土)に日本初のムーミンのテーマパーク「ムーミンバレーパーク」がオープンします!↓
また、2019年4月9日(火)~6月16日(日)には、六本木ヒルズ森タワー52階にある「森アーツセンターギャラリー」にて、ムーミンの原画を展示する「ムーミン展」も開催されます!
ムーミン展の詳細はこちらから
今回はムーミンバレーパークのオープンや、ムーミン展に向けて、ムーミンの原作の独特な世界感についての解説や、ムーミンの原作全9巻についての紹介をしていきます!
ちょっと怖い?独特な世界感の「ムーミン」
ムーミンシリーズは、フィンランドの作家、トーベ・ヤンソンが書いた「小さなトロールと大きな洪水」から始まりました。
本作が出版されたのは戦後の1945年。当時は風刺画を描いていたトーベですが、自身が想像した「トロール」という生き物を入れて、児童向けのおはなしに改変して生まれたのが「ムーミン」です。
北欧の冬の暗さや怖さを象徴するような世界感
ムーミンの物語の世界感は、児童書にしてはやや暗めな雰囲気が特徴。というのも、ムーミンが生まれたフィンランドは冬がとても長く、日照時間もとても短い国です。
真冬の暗さは冬至の前後、特に北部では一日中真っ暗な日もあるというほど!
作者のトーベもそんな真冬の暗さの中で、ムーミンと似たような不安や怖さ、寂しさを体験したそう。
ムーミンの物語にもそんな、真冬の暗さからくる怖さや孤独を象徴するような世界感が色濃く残っています。
冬の象徴「モラン」
ムーミンの世界の中で恐れられている存在が「モラン」
「楽しいムーミン一家」で初めて登場したモランは冬の生き物です。モランが歩いた道は凍りつき、生えていた草木が枯れ、もうそこには何も生えてこないといわれています。
しかし、ただ怖いだけの存在ではなく、彼女はただひとり、孤独に「温かい光」を求めてさまよい続けている寂しいキャラクター。
「ムーミン谷の冬」では石油ランプに温まりにきたモランが、火が消えてしまって悲しそうな表情をしているシーンもあります。
怖い表現が一番多い「小さなトロールと大きな洪水」
ムーミンシリーズ第一作目となった「小さなトロールと大きな洪水」では、失踪してしまったムーミンパパを、ムーミンとムーミンママ、スニフが恐ろしい森を抜けてパパを探しに行く物語です。
こちらは1945年に一時出版されましたが、きちんとした形で出版されてのは21年経った、1999年。
パパもおらず、住むところもなく、寒く、太陽の光も届かないという不安や恐怖の中で進められていく物語は、ムーミンの世界感独特の、どこか薄暗い雰囲気を一番色濃く感じられる作品です。
怖いだけじゃないユーモラスな表現もあり
「ムーミン谷の冬」では、見た者すべてを凍らせてしまう、恐ろしい「氷姫」をうっかり見てしまったばっかりに、凍ってしまった小りすがいました。
小りすはこの後どうなってしまったのか不安になってしまう読者のために、トーベは本作内で
(ここでみなさんが、かなしくてなきそうになったなら、大いそぎで199ページを見てごらんなさい。-作者より)
という一文も添えられています。
独特の怖さや暗さのあるムーミンの世界感ですが、時代や、トーベ自身の変化によって次第に明るいおはなしが増え、このようなユーモラスな表現も多々あることが、ムーミンの世界に惹きつけられる魅力のひとつなのではないでしょうか。
ムーミンのキャラクター
ムーミンシリーズに登場する主なキャラクターは
- 主人公のムーミン
- ムーミンパパ
- ムーミンママ
- スノークのおじょうさん(フローレン)
- スナフキン
- ミイ(リトルミイ)
ムーミン屋敷に住む住人をはじめとして、様々な物語が繰り広げられていきます。
「ムーミン童話全集」全9巻を紹介!
ムーミンの原作は全9巻あり、第一作目の「小さなトロールと大きな洪水」は別巻となっています。
ムーミンの原点ともいえるこちらは最初に読んでも、最後に読んでも良し、一度は読んでほしい作品でもあります。
それでは二作目となる「ムーミン谷の彗星」から紹介していきます!
ムーミン谷の彗星
講談社ー1990年出版
定価1600円(税別)
ムーミンシリーズがきちんとした形で初めて世に出た作品が本作。
まだ初期の雰囲気が残るこちらは、地球に彗星が近づいてくるにつれての不安や恐怖の気持ちの描写や、スナフキンが先頭をきって天文台へと向かうドキドキの冒険、そして最後はどうなってしまうのか気になって読む手が止まらなくなる、ムーミンシリーズの中でも特に人気の高い、名作ともいえる作品です。
楽しいムーミン一家
講談社ー1990年出版
定価1600円(税別)
ある日、不思議な黒い帽子を拾ったムーミン達。実はその帽子はある魔法使いのものだったのです。魔法使いと共に繰り広げる不思議な事件の数々にきっと虜になってしまうはず!
ムーミンパパの思い出
講談社ー1990年出版
定価1600円(税別)
外に出られないムーミンパパは、自叙伝の中に入れていなかった、自分の小さいころからの生い立ちについて「思い出の記」を書くことにします。
捨て子だったムーミンパパが養護施設から逃げ出した日、スナフキンとスニフのパパなどの素敵な仲間との出会いや冒険、そしてムーミンママとの出会いなど、今まで知らなかったムーミンパパの過去のおはなしです。
ムーミン谷の夏祭り
講談社ー1990年出版
定価1600円(税別)
ムーミン谷の冬
講談社ー1990年出版
定価1600円(税別)
ムーミン達は春まで冬眠をするのですが、あるときムーミンだけひとり起きてしまったのです。暗い暗い冬の季節には冬だけの生き物がいたのでした。
ムーミン谷の仲間たち
講談社ー1990年出版
定価1600円
ムーミンパパ海へ行く
講談社ー1990年出版
定価1600円(税別)
しかしその灯台に行ってもパパの思う通りにはいかなくて…ムーミン谷では見ることのできなかったムーミン達の生活が垣間見られる作品。
【最終回】ムーミン谷の十一月
講談社ー1990年出版
定価1600円(税別)
寒くなり、人恋しくなったムーミン谷の住人たちはムーミン屋敷を訪れるのですが、なんとムーミン一家は不在だったのです。彼らはムーミン達の帰りを待ちながらも奇妙な共同生活を始めるのですが…
ムーミン一家が出てこない衝撃の最終回
こちらはトーベが手掛けたムーミンシリーズの最後の本になります。
「ムーミン谷の十一月」を書き終え、あとは挿絵のみという段階になったときに、トーベの母が他界しました。本作もそんな母との別れを予想していたような、ムーミン一家の初めての不在というおはなしでした。
南へ向かう旅への途中で良いメロディーが浮かばず、ムーミン谷へ戻ってくるスナフキンをはじめ、パーティーを開きたくなってやって来たスクルッタ、何をすればよいのかわからなくなってしまったフィリフヨンカ、ムーミンママに甘えたくなったホムサ。
しかし、ムーミン屋敷には誰もいませんでした。共同生活をするようになった彼らは、次第にムーミン達の助言なしでも自分のやるべきことがわかるようになっていきます。
最終回にしてムーミン一家の登場がないというちょっと不思議なおはなしですが、実は一番大切なことが書いてあるのも本作。
最後にはムーミン一家の帰宅を想像させるような描写もあるので、悲しまないでくださいね。
別巻:小さなトロールと大きな洪水
講談社ー1992年出版
定価1400円(税別)
一度は体験してほしい、原作ならではのムーミンの世界
ムーミンは小さい頃アニメで見たという方も多いかもしれませんね。
しかし、原作ではアニメとは違うキャラクターの話し方や雰囲気、トーベが描いた挿絵を楽しむことができます。より深くムーミンの世界を味わえるのが原作の良さ。
2019年3月16日(土)にオープンするムーミンバレーパーク。そしてパークがオープンしたあとの2019年4月9日(火)~6月16日(日)には、原作の絵が展示される「ムーミン展」も開催されます。
今だからこそ改めて読んでおきたいムーミンの原作で、より深くムーミンの世界に触れてみませんか?
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