ミヒャエル・エンデの代表作「モモ」「はてしない物語」の名言をあらすじ・登場人物の紹介と合わせてご紹介しています。ネタバレありです!
「ミヒャエル・エンデ」というドイツの児童文学作家をご存知でしょうか?
もしかしたら「モモ」を読んで知っているという方も多いかもしれませんね。
ミヒャエル・エンデの書く作品は、児童文学の中でもとても奥が深く、大人になってから読むと思わずハッとさせられるような、哲学的な作品が多いのが特徴的です。
今回はそんなミヒャエル・エンデの名作「モモ」と「はてしない物語」の2作品の中から、筆者も多くの影響を受けた名言を、あらすじと登場人物の紹介とともにご紹介していきます。
「モモ」のあらすじと登場人物
出典:岩波書店
定価1836円
ミヒャエル・エンデの作品の中でも1番人気の高い作品と言っても過言ではないのが「モモ」。芸能界でも小泉今日子さんを始めとした著名人からのファンも多い作品です。
ミヒャエル・エンデ自身が挿絵↑も手掛けた本作。一度は読んでみる価値ありですよ。
主な登場人物
- モモ・・・主人公。人の話を聞くのが得意な小学生くらいの女の子。誰も使わなくなった「円形劇場」に1人で済んでいる。変わった身なりの子。
- 道路掃除夫のペッポ…モモの親友。思慮深い。
- 観光ガイドのジジ・・・モモの親友。ほら吹き。
- 灰色の男たち・・・人から盗んだ時間で生きている。時間泥棒。
- マイスター・ホラ・・・モモを時間の国へと誘ってくれる銀色の髪を持つ老紳士。時間を人に配っている。
- カシオペイア・・・モモを時間の国へと連れてきたカメ。
- ニノ…レストランを経営している友人。
あらすじ
人の話を聴くことがとても上手なモモは、街のみんなのことが大好きでした。
ところがある日、1日の時間の中の無駄な時間を貯蓄しておくことができるという「貯蓄銀行」から派遣された灰色の男たちが、街の人々の時間を貯蓄銀行に貯めておくようになりました。
しかし、時間を貯蓄しておくことができるというのはまるっきりのウソ。
灰色の男たちは人々から奪った時間を命にして生きていたんです。しかし、人の話を聴くことがとても上手なモモだけは、灰色の男には騙されませんでした。
それどころか灰色の男から事実を聞くことができた唯一の存在に。灰色の男たちの本来の目的を知ったモモは、大好きな街の人々の奪われた時間を取り戻しに行くのですが…
「モモ」の名言
モモの親友、道路掃除夫のベッポの名言
いちどに道路ぜんぶのことを考えてはいかん、それはわかるかな?つぎの一歩のことだけ、つぎのひと呼吸のことだけ、つぎのひとはきのことだけを考えるんだ。いつもつぎだけのことをな。
するとたのしくなってくる。これがだいじなんだな、たのしければ、仕事がうまくはかどる。こういうふうにやらにゃあだめなんだ。ーP44
モモの親友で、道路掃除夫のベッポというおじいさんの言葉です。
とても長い道路の掃除を受けもつベッポは、時々やりきれないと思ってしまうこともあります。
この考え方は、毎日忙しく働く現代社会。
そして、人生にも当てはめることができる言葉だと思っています。
この先の道がはてしなく長く感じて時々恐ろしくなるけれど、それよりも「今」目の前にあることだけをこなしていくことで、恐怖から先へ進むことへの楽しさに変わるのかもしれません。
時間の世界の住人「マイスター・ホラ」の名言
人間というものは、ひとりひとりがそれぞれのじぶんの時間を持っている。そしてこの時間は、ほんとうにじぶんのものであるあいだだけ、生きた時間でいられるのだよ。-P209
時間の世界の住人であるマイスター・ホラがモモに時間のことを教えてくれるときの言葉です。
灰色の男たちは、人々から奪った時間で生きています。
その奪った時間というのは「死んだ時間」。その人が本来生きるはずだった時間は、奪われてしまったら死んだ時間になってしまうんです。
自分のためにあるのが「生きた時間」です。
灰色の男たちに奪われない、自分だけの生きた時間を生きるには、忙しく過ぎる時間の間でもちょっとだけ立ち止まって「今の時間」を生きることで、些細な幸せから豊かさを感じることも大切なのではないでしょうか。
名言いろいろ
モモ、ひとつだけきみに言っておくけどね、人生でいちばん危険なことは、かなえられるはずのない夢が、かなえられてしまうことなんだよ
灰色の男たちよって、スターとなった観光ガイドのジジ。希望が叶ったものの、仕事への信念は変わり果て喜びのない人生になってしまいました。そんなジジの一言です。
時間をはかるにはカレンダーや時計がありますが、はかってみたところであまり意味はありません。というのは、だれでも知っているとおり、その時間にどんなことがあったかによって、わずか一時間でも永遠の長さに感じられることもあれば、ほんの一瞬と思えることもあるからです。
なぜなら時間とは、生きるということ、そのものだからです。そして人のいのちは心を住みかとしているからです。
「モモ」の著者ミヒャエル・エンデの言葉。
人生でいちばん危険なことは、かなえられるはずのない夢がかなえられてしまうことなんだよ
俺は俺なんだ。世界中の人間の中で、俺という人間はひとりしかいない。だから俺は俺なりに、この世界で大切な存在なんだ。
なぜなら時間とは、生きるということ、そのものだからです。そして人のいのちは心を住みかとしているからです。
「その気になれば、金もちになるのなんか、かんたんさ。」ジジはモモに言いました。「でもな、ちっとばかりいいくらしをするために、いのちもたましいも売りわたしちまったやつらを見てみろよ! おれはいやだな、そんなやり方は。たとえ一ぱいのコーヒー代に事欠くことがあっても――ジジはやっぱりジジのままでいたいよ!」
「今を生きる」大切さを伝える「モモ」
「モモ」は、忙しい現代社会への風刺とも捉えられるおはなしです。
目まぐるしく過ぎる現代社会に疲れてしまった人にこそ、読んでほしい作品が「モモ」。
時間というのは誰しもが平等に与えられたものです。その時間に無駄というものはないのではないでしょうか。
たまには何もしないで、ただ時間が過ぎるのを感じてみるのも良いものですよ。時間の概念がガラッと変わる作品です。
「はてしない物語」の登場人物とあらすじ
出典:岩波書店
定価3089円
主な登場人物
- バスチアン・バルタザール・ブックス・・・主人公の少年。読書と空想が好き。母親を失って父親と暮らしている。クラスメイトからいじめを受けている。
- カール・コンラート・コレアンダー・・・古本屋を経営する男。
- 幼ごころの君・・・本の世界「ファンタージエン」を司る姫。
- アトレーユ・・・緑の肌をした少年。「虚無」の拡大により崩壊の危機となったファンタージエンを守る使者に任命された。
- さすらい山の古老・・・ファンタージエンを取り巻く全てのことを本にしている。
- 魔術師サイーデ・・・バスチアンをファンタージエンの新しい帝王になることをすすめる。
あらすじ
いじめられっ子の主人公バスチアンが、学校に行きたくなくて寄り道した先の古本屋でたまたま見つけたのが「はてしない物語」でした。
バスチアンは学校にある物置に隠れて、この「はてしない物語」を読むことにしました。「はてしない物語」は主人公のアトレーユと幸いの竜フッフールとの冒険物語でした。
しかし、アトレーユとフッフールだけでは解決できない虚無の世界の浸食が進んでいき、「はてしない物語」の世界が崩壊寸前に。その浸食を止めることができるのが人間の勇者の存在でした。
そしてその人間というのがバスチアンだったのです。バスチアンが勇者になると発言したことで、バスチアンがはてしない物語の中に入っていき、自らが主人公となって冒険をしていくのですが…
「はてしない物語」の名言
「バスチアン」の名言
アトレーユだったらちょっと困ったからって、そんなにすぐにあきらめやしないだろう。はじめちまったんだから、終わりまでしなくっちゃ。これだけきちまったものを、今さらもどるわけにはいかないじゃないか。どうなるにしても、先へ進むよりほかないな。ーP93
本の中の主人公と自分を重ね合わせて勇気をもらうという経験は、本を読むことが好きな人は一度は経験したことがあるはず。
自分に自信がないバスチアンも「はてしない物語」の主人公アトレーユと自分を重ね合わせて、先へ進むことの勇気をもらうことができたというシーンの一幕です。
世の中には悦び(よろこび)の形は何千何万とあるけれども、それはみな、結局のところたった一つ、愛することができるという悦びなのだと。愛することと悦び、この二つは一つ、同じものなのだ。ーP572
バスチアンは、母親が亡くなってから父親の愛情を感じることができず、毎日寂しさを感じていました。
そんなバスチアンは、「はてしない物語」の世界の中で自らの望みを叶えていく代わりに、自らの記憶もひとつずつ失っていきます。
とうとう自分の名前すら忘れてしまったバスチアンがようやく気が付いたのが、「愛することの悦び」でした。人を愛するということは、人生の中で何よりもかけがえのないことだとバスチアンは気づくことができたんですね。
「果てしない物語」の名言いろいろ
何ごとも起こるがままに起こらしめよ。悪も善も、美も醜も、愚も賢も、すべてそなたにとっては区別はないのだぞ。
ある場所を立ち去ろうと思うだけでは十分ではない。他の所へゆきたいという望みがなければだめなのです。
あなたは望みの道を歩いてきたの。この道は、けっしてまっすぐではないのよ。あなたも大きなまわり道をしたけれど、でもそれがあなたの道だったの。
あなたはあなたの道を進んでいらっしゃい! 何もかもそれでいいのだし、それで正しいのよ。
自身の内面が反映される「はてしない物語」の世界
まるで自分とバスチアンが一緒にはてしない物語を読んでいるような感覚を味わえるのが「はてしない物語」の最大の魅力。
「はてしない物語」という世界はモンデンキントが創りだしたものではあるけれど、その中の物語を創るのは「はてしない物語」の世界に入った人間です。
自分自身の内面が「はてしない物語」なのかもしれません。
バスチアンが見た目のことを気にしていたからこそ、自分自身の内面をよく見るように、とモンデンキントがバスチアンのことを呼んだのではないでしょうか。
そして、バスチアンのいる世界と、アトレーユがいる世界と文字の色が違うというのも注目してほしいポイント。↓
とても分厚くてボリュームのある作品なのですが、バスチアンが「はてしない物語」の中へと入りこんでいくところから更にグッと面白くなっていきます。
きっと先が気になって読む手がとまらなくなるはず!もし自分がファンタージエンの中に入る人間だとしたら、どんな世界が待っているのかと想像するのも楽しいですよ。
ハードカバーから文庫本サイズのものまで出版されている「はてしない物語」ですが、筆者は断然ハードカバーのものをおすすめします!
ハードカバーのものは「はてしない物語」の中に登場する本と全く同じ装丁のもの。
まるで自分もバスチアンになったような感覚で読むことができるんですよ♪
大人も読みたい「ミヒャエル・エンデ」の魅力
「モモ」も「はてしない物語」も、どちらも大人になってから読むと、思わずハッと考えさせられるような名言が物語の中にちりばめられています。
皆さんもぜひ、ミヒャエル・エンデの作品を読んで、「時間の大切さ」や「自分自身の内面」と向き合ってみてはいかがでしょうか?
子供の頃とは違う何か気づくことがあるはずですよ( *´艸`)
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