私の大好きな児童文学作家「高楼方子」さんのおすすめ作品をご紹介します。
こんにちは。皆さんは児童文学作家の「高楼方子(たかどのほうこ)」さんをご存知ですか?
もしかしたら「へんてこもりにいこうよ」という作品を読んだことがあるという方も多いのではないでしょうか。じつは「へんてこもりにいこうよ」も高楼方子さんの作品なんですよ♪
出典:偕成社
高楼方子さんの描く物語は、なんでもない日常の中にふと、自分だけが見つけた秘密を息をひそめてそっと共有するような、ちょっと不思議な世界感のある作風なのが特徴です。
そして、物語に出てくる描写もとても細かく描かれているので、読んでいるとまるで自分も物語の世界に入り込んでしまっているかのように錯覚してしまうほど。
小学校高学年向けの長編の小説では、主人公のほとんどが12歳ほどの女の子です。
そこで今回は、ちょうど主人公たちと同じく12歳を迎えたお子様に読んでほしい、大人が読んでも面白い高楼方子作品を7つご紹介いたします。
高楼方子とは?
高楼方子(たかどのほうこ)さんは、北海道函館市出身の児童文学作家です。
小学生高学年向け長編小説「ココの詩」で衝撃的なデビューを果たし、絵本から、長編小説まで児童文学の分野で幅広く活躍されています。
1996年に「いたずらおばあさん」「へんてこもりにいこうよ」で路傍の石幼少年文学賞を受賞し、そのあとも数々の賞を受賞している実力派の児童文学作家さんです。
挿絵の多くを手掛けるのは姉の千葉史子さん
高楼方子さんの作品の多くの表紙や挿絵を手掛けているのは、じつは、高楼方子さんのお姉さんである「千葉史子(ちばちかこ)」さん。高楼方子さんの物語の世界感をそのまま表現した挿絵は姉妹ならではの仕上がりです。
ぜひ、千葉史子さんが手掛けた表紙や挿絵の作品にも注目して見てみてくださいね。
高楼方子ワールド全開の摩訶不思議な物語「時計坂の家」
定価 1900円+税
1992年に初版が発行された「時計坂の家」は、高楼方子さんの作品の中でも一、二を争うほど人気の高い作品で、筆者も大変影響を受けた大好きな作品です。
あらすじ
12歳の夏、主人公のフー子は、いとこのマリカから手紙をもらって、7年ぶりにおじいさんの住む「汀舘(みぎわだて)」へと向かいます。
しかし、久しぶりにおじいさんの家に来たフー子は、2階に行く途中、ふと、ある違和感に気づきました。
それは、階段の踊り場の部分に、不自然につけられた3段ほどの階段でした。そして、その先にはドアが付けられていたであろう跡と窓。窓の下は地面になっていました。
不思議に思ったフー子は、その窓からぼうっと景色を眺めていると、耳元でふと、「コチ、コチ、コチ、コチ」という音が聞こえていました。それは、窓にかかっていた懐中時計の音でした。
閉じていたはずの懐中時計の蓋がひとりでに開き、それがみるみるうちに花へと変わっていったのです。
すると、窓の様子もまた、お花の咲く庭園のような場所へと変わっていて、元のドアだったであろう場所も開き、フー子は幻の庭園へと足を踏み入れていくのですが…
幻のような庭園と、不思議ないとこのマリカ、そしておばあさんと亡命貴族のチェルヌイシェフ。
謎だらけでどんどん先が気になってしまうようなドキドキするような展開に、きっと読む手が止まらなくなり、摩訶不思議な高楼方子ワールドに引き込まれること間違いなし!の作品です。
本を読み終わった後に本の見開きを開くと、きっとハッとなってしまうはず。
11月になったら読みたくなる「十一月の扉」
定価 1800円+税
あらすじ
中学生の爽子は、ある日、弟から借りた双眼鏡でぼんやりと街を眺めていると、ふと、モミの木のような数本の木立ちの間からのぞく、赤茶色の屋根の二階建ての白い家を見つけます。
「あんなところにお家なんてあったかな?」なぜだかわからないけれど、どうしてもこの家に惹きつけられてしまった爽子は、親の転勤を理由に、2ヶ月の間、この「十一月荘」で過ごすことになりました。
ある日、爽子は、十一月荘の近くの古びた文房具店で一目ぼれした、ドードー鳥が描かれた一冊のノートを手に入れます。それから爽子は十一月荘での出来事や、一緒に暮らしている住民たちを動物に置き換えておとぎ話を書いていくのですが…
秋独特の雰囲気を感じられる「十一月の扉」は、「時計坂の家」とはまたちょっと違った、温かみを感じる作品なんですが、じつは「時計坂の家」とも少しだけ関連しているんです。
「十一月の扉」の前に「時計坂の家」を読むと、色々な発見があるかもしれませんよ~!
ある意味一番の衝撃作「ココの詩」
定価 2200円+税
あらすじ
人形のココは、ある日こっそりと外の世界へと抜け出していきます。
初めて外の世界に出たココは、首に赤いネッカチーフを巻いたヤクザなネズミのヤスに出会います。
ココはヤスの持つ白い舟に乗り、街の色々なことを知っていくのですが、ココがお金を持っていないと気付いたヤスは、なんと、ココをネコに身売りしてしまうのです。
じつはネコは、ウフィツィ美術館にある「サン・ロマーノの戦い」の絵の贋作(がんさく)を描いて、本物の絵とすり替えてお金儲けをしようと企んでいたのです。もちろんヤスもそれに関わっています。
なにも知らないココは、ある夜、絵に詳しくて勇敢なネズミ、モロと出会い贋作のことを知ります。そしてモロの仲間たちを共に、贋作と本物の絵を入れ替えないように奮闘していくのですが…
ある意味で、衝撃的な作品が「ココの詩」。
デビュー作とは思えないほど作りこまれた世界感で、物語が後半に近づくにつれてどんどん物語の世界に引き込まれていってしまいます。ラストの展開には驚きが隠せなくなるはず。
遊び心を忘れないおばあさん2人の痛快物語「いたずらおばあさん」
定価 1188円
あらすじ
84歳の偉大な洋服研究家のエラババ先生は、長い年月をかけて、ついに「若返る服」を開発しました。
そして、エラババ先生がひそかに目をつけていた、68歳のヒョコルさんを弟子に迎え、2人のおばあさんが、それぞれ8歳のエラちゃんとヒョコちゃんになって、いけすかない大人たちをぎゃふんと言わせる痛快物語。
上記に上げた3作品とはまたちょっと違った、明るさ全開の作品が「いたずらおばあさん」です。
おばあさん2人が子どもに戻って、子ども目線で、悪事を働く大人たちをぎゃふんと言わせるおはなしに、きっと誰もがクスッとなってしまうはず。
子どもが読んでも、大人が読んでもまた違った価値観を感じることができる作品です。
子どもだけの壁新聞が楽しい「ニレの木広場のモモモ館」
定価 1512円+税
あらすじ
9月の半ばを過ぎた土曜日の朝、ニレの木の下でぐうぜん出会った5年生のモモと、名前が似ているモカ、そして4年生のカンタ。
初めて会った3人なのに、その日のお昼前には、すっかり意気投合して、大人の新聞とは違う、子どもだけの壁新聞「モモモ館」をつくっていくことになるのですが…
「いたずらおばあさん」と同じように、子ども目線で楽しく読むことができるのが「ニレの木広場のモモモ館」。ですがただ、のほほんと物語が進んでいくわけではないのが高楼方子さんの作品。
じつは色んな伏線が作品内に張り巡らされているので物語が後半に近づくにつれ、どんどん次の展開が気になりきっとページをめくる手が止まらなくなるはず!
そして物語の途中に描かれている壁新聞も読みごたえがあってとても面白いのでそちらにもぜひ、注目してみてくださいね♪
高楼方子さん自身も影響を受けた名作「小公女」の訳本
定価 2300円+税
「秘密の花園」を書いたバーネットの名作「小公女」は、日本でもアニメやドラマにもなっていたことでご存知の方も多いのではないでしょうか。
じつは高楼方子さんも「小公女」に影響された人のひとり。そんな高楼方子さん自身が、改めて翻訳した「小公女」はぜひとも読んでほしい1冊です。
あらすじ
舞台はまだインドがイギリスの支配下にあった時代。
資産家の娘セーラは、父親の意向でロンドンにあるミンチン女子寄宿学校で暮らすことになりました。
お金をたくさん持っているセーラは、寄宿学校の長であるミンチン女史からも大変気に入られて、まるでお姫様のような扱いを受けていましたが、セーラはお金を持っているからといって誰にも媚びるわけではなく、誰にでも分け隔てなく親切に接していました。
ところがある晩、資産家である父がインドで亡くなったとの知らせが入ります。父は事業に全財産を投資しており、事業も失敗に終わってしまったので、セーラは一夜にして一文無しになってしまったのです。
セーラがお金をもっていないと知ったミンチン女史は、それからセーラを汚い屋根裏部屋に住まわせ、下働きとしてこき使うようになりました。
しかし、セーラはどんなひどい扱いを受けようと、誇り高く生きようと決めます。自分のことを「公女」(お姫様)だと思い込んで、「自分が公女だったらこうする」と想像しながら毎日の厳しい生活を過ごしていました。
ところがある日、寄宿学校の隣にインドの紳士が引っ越してきます。そのインドの紳士というのは、じつはセーラの父の友人で、一緒に事業をしていた人でした。貧しいセーラと、お金持ちのインドの紳士。セーラはいったいどうなってしまうのでしょうか…
名作「小公女」は色んな出版社から翻訳本が出版されていますが、小公女を愛する高楼方子さんが翻訳したこちらは、とても読みやすい文章になっているので小公女の訳本は高楼方子さんをおすすめします。
どんなに貧しくても、誇り高く生きるセーラの姿に良い影響を受けること間違いなしの作品です。
「小公女」の世界が見え隠れする「緑の模様画」
定価 1800円+税
あらすじ
小学校を卒業したまゆ子は、お母さんのお友達のいる学校の寮におつかいに行くことになりました。
そこにはまゆ子と同い年で、「小公女」のアーメンガードそっくりのアミ、そしてお母さんのお友達の娘のテトと出会い、すぐに仲良くなります。
学校の寮には、じつはあるうわさ話がありました。
それは、寮の窓から見える塔のお家に昔住んでいた人が、失恋して、塔の上から身を投げ自殺。それからというもの、誰も居ないはずの塔には光がぽっと灯って、死んだ男の影が見えることがあるという、うわさ話でした。
3人はその真相を確かめることになるのですが、塔の家のうわさ話は果たして本当だったのか。「小公女」の本のストーリーと深く関わりながら3人の友情模様を描いた作品です。
「小公女」の物語と深く関わる本作は、小公女のストーリーを知ってから読むと、より深く作品の世界に浸ることができるので、ぜひ、高楼方子さん翻訳の「小公女」を読んでから見ることをおすすめします。
一風変わった物語が読みたいなら「高楼方子」の作品を
高楼方子さんの書く児童文学作品は、大人が読んでも面白い作品ばかりというのが一番のおすすめポイントです。児童文学は、もちろん子供向けにつくられているので、展開が想像できるものも多いのですが、高楼方子さんの作品は、大人が読んでも先の展開が全く読めないというところが大きな魅力。
主人公も12歳あたりの年頃の女の子です。特に「時計坂の家」は12歳だからこそ、12歳の女の子には特別に読んでほしい作品でもあります。
ちょっと不思議な世界感の作品を読みたい!と思われたなら、ぜひ、高楼方子さんの作品を手にとってみてくださいね。きっと、あっと驚く体験ができるはず。
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